『ねえ、あなたX国製の冷凍食品に毒が入ってたんですって。 怖いわね。向こうの国は何でもデタラメなんだから』
と夕食を食べながらニュースを見ていた妻が言った。
「ああ、そうだな」
私はそっけなく返事をした。
結婚以来何年も妻と一緒に食事をしてきたが、この日私は緊張していた。
私は今日妻を殺すのだ。
私に愛人ができ、その愛人と一緒になりたいのだが妻が離婚に応じてくれないからだ。
私は意を決して妻が飲むワインに毒薬を混ぜた。
この毒薬を飲むとアナフィラキシーショックという激しいアレルギー症状を引き起こし、命を落とす。
自らの体内の作用で死ぬため、検死をしても怪しまれることはないのだ。
それはそうと毒入りワインを飲んでから30分経つが、妻は苦しそうな表情を見せない。
おかしい。
この毒は数分で効くはずなのだ。
なぜかわからぬまま時間だけが過ぎ、その間も妻はいつもと変わることなく過ごしていた。
飲ませる量が少なかったのだろうか?
私は毒物の入った茶色い小瓶を手にとって見つめた。
そのラベルには「X国製」との文字が小さく印刷されていた。